患者さんからよく「痛い時は冷やした方が良いですか? それとも温めた方がよいですか?」との質問を受けます。急性期はとにかく冷やすとの認識の方は非常に多いと思います。私もカイロプラクティックの学校へ通っていた時は、とにかく急性期は冷やすと教わりましたが、10年以上臨床を続けていると、必ずしも冷やすという処置は適切でないと感じています。
では、急に腰や首等が痛くなったら、冷やした方が正しいのか?もしくは温めた方が良いのか?この事について詳しくご説明したいと思います。
外傷による組織の損傷を伴う痛み
例えば、捻挫やむちうち等の外傷による組織の損傷を伴う痛みの場合、炎症を起こしますので、この炎症が起きている場合、患部を冷やすことで痛みが緩和します。炎症が起きている時に何故冷やす必要があるのか?
炎症反応とは、傷ついた細胞を取り除き、損傷した組織を修復する為、まず白血球が損傷した組織を破壊するのですが、この際、損傷した組織が腫れたり、ヒリヒリと熱感を伴った痛みが生じます。このような状態の時は、患部を冷やすと痛みが軽減します。
日常的に行っている動作で急に痛みを発症した場合
当院に急性の腰痛や、膝痛、首の痛み等で来院される多くの患者さんから、「風呂桶に入る時、足を上げたら急に腰が痛くなった」「朝顔を洗おうと前かがみになった時、腰が急に痛くなった」と、日常的に行っているごく普通の動作で急に痛み出したとよく伺います。
このように、特に痛みの原因となるような要素はなかったにも関わらず、痛みが急に発症するタイプは、組織障害が治癒した後も生じる痛みである事が殆どです。これは組織障害が治癒しても感じる、あるいは組織障害が非常に軽いのに痛みを発症しています。
このタイプの痛みは、過度に筋肉に負担がかかったり、もしくは様々な精神的なストレス等で交感神経が過剰に興奮しその結果、筋肉が過緊張を起こす事で血管が収縮し酸欠状態になる事で痛み物質が産生され痛みを発症します。当院に腰痛で来院される患者さんの9割はこのタイプです。
特に原因なく発症した腰痛等の原因は患部の「酸欠」なので、痛みを改善するには血液の循環を促進する事、つまり温める事が必要になるわけです。よく患者さんからも「温めると一時的に楽になる気がします」との話を聞きます。痛みの原因が血行不良による酸欠なわけですから、当然温めれば一時的にでも血液の循環が良くなり、その結果痛みがなくなるという事です。
まとめ
外傷による炎症を伴った痛みは、一度でも経験のある方なら恐らく鑑別するのは難しくないと思いますので、熱感を持っていてヒリヒリと痛む場合は冷やす。特に原因なく日常的に行っている動作の時、急に痛みを発症した場合は温める。 基本的にはこのように考えて頂ければ良いと思います。